bluerose’s diary

基礎疾患視点を中心に日々感じたこと

追悼 中井久夫先生

今朝、新聞で精神科医中井久夫先生の訃報に接する。

2022年8月8日、午前11時5分。

神戸市内の施設にて肺炎で亡くなったとのこと。88歳。

 



 

中井先生との出会いは10年以上前、まだ自分が定期的に精神科に通っていたころ、読書を通して著作に出会う。

それが『最終講義 分裂病私見』という本である。

最終講義――分裂病私見

この本でわたしは統合失調症(先生の時代はまだ精神分裂病と呼ばれていた)の新しい視点を教えていただき、目からうろこだった。

それまで精神科の先生が書いたエッセイなどは読んでいたけど、統合失調症に関しての本を読むのは気がめいって読む気がしなかった。

そんなわたしがどういうわけでこの本を読もうと思ったのか、実はもう覚えていないのである。古本をネットで購入したから多分図書館で最初読んで感銘を受けたという流れだと思うのだけど、人の記憶はあいまいなところがあるなあと感じる。

 

とにかく、それまで私はもう生涯ずっと病院へ通い続けなくてはならないと思っていたから、少し自分の中でそのことを受け入れようかという気持ちが芽生えていたのかもしれない。

 

その後すぐ友人がなぜかわたしの病気についてまとめてはどうかしら?と提案してくれて、そのまとめで中井先生の本がずいぶんと参考になった。先生の視点で自分の病気を考えることであのときはああなのかな?と考えることも多かった。

 

そして、転機がやってくる。

自分の病気についてまとめが終わってしばらくして、ある日夢を見る。

洞窟でうずくまっていた私が中井先生の言葉を信じて洞窟から脱出する夢である。

後ろから母なのか私なのかわからないけど追いかけてきて私を殺そうとするのを必死になって逃げながら脱出する。そんな感じの夢。

 

それから少しして、私は世間的にまだ民間のもので怪しいとされる代替療法に関係するところへカウンセリングを受ける決意をした。巷では「スピリチュアル」と呼ばれているものだ。

 

そこで大変打撃を受ける言葉をもらって自分は衝撃のあまりまた気が狂いそうになった。再入院の覚悟もした。それでも入院もせず、なんとか2年後、定期通院から解放されるまでに至ったのは、やはり中井先生がどこかで書いていたこういう言葉を信じていたから。

 

「急性期は病気から抜け出せるチャンスでもある」*1

 

先生、どうもありがとう。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

*1:P75にこんな言葉がある

“慢性分裂病状態から離脱するチャンスはもう一つあって(一つ目が身体病)それは急性精神病状態の再発です …中略… これは分裂病ホメオスタシスのほうが揺らいだ場合でしょう。”